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技術情報
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ロールスリッター
2025年02月11日
電子機器業界では、コンデンサやトランス、電線、フレキシブルプリント基板(FPC)など、多岐にわたる製品の製造過程でスリット加工が活用されています。製品の小型化や高性能化を実現するために、スリット加工は欠かせません。
本記事では、電子機器業界におけるスリット加工の具体的な用途や加工可能な素材の特徴、さらに実際の事例を解説します。
スリッターの導入を検討している企業の中には、次のように考える方もいるでしょう。
「スリッターを使用しているが、熟練度が必要で操作や調整が難しい」
「材料が必要なときに必要な分だけスリットをしたい」
「誰が使っても同じ品質や精度になるようにしたい」
このような方におすすめなのがロールスリッターです。ロールスリッターはこれまでに40製品以上もの特許や実用新案を取得したキンダイが開発した独自技術です。通常のスリッターに比べて次のような特徴があります。
項目 | スリッター
|
ロールスリッター
|
スリッター刃枚数 | 複数枚 | 1枚 |
スリッター刃種類 | シェアカット(シャーカット) レザーカット(フェザーカット) スコアカット |
片刃 両刃 チップソー |
スリット方式 | ロールtoロールでスリット | 紙管ごとスリット |
スリット対象 | フィルム、シートなどの連続した素材 | ロール状の原反(紙管付き) |
熟練度 | 熟練技術が必要で属人的な機械になりやすい | タッチパネルで簡単設定、初心者や女性向き |
精度や品質 | 高精度 | 安定した精度 |
作業効率 | 高速で大量生産向き ※同じ材料を生産する場合に限る |
待ち時間なく効率的に、必要な分だけスリット可 |
安全性 | 操作者の技術による | 刃物は使用中以外カバー内で安全 |
メンテナンス | 刃物交換や位置調整が高難易度 | 誰でも簡単に交換や調整可 |
対象ニーズ | 生産性重視、高精度重視 | 操作性や安定性重視 在庫削減や納期短縮に貢献 |
対象素材 | 小範囲 ※素材によって機種が変わる |
広範囲 ※1台で広範囲に対応可 |
本記事では、ロールスリッターについても詳しく解説します。
スリット加工は、ロール状に巻かれた素材をスリット刃で指定の幅にカットし、再度ロール状に巻き取る加工方法です。ここでは、電子機器業界でスリット加工が求められる主な用途を詳しく解説します。
プリント基板(PCB)やフレキシブルプリント基板(FPC)における銅箔加工は、電子機器の回路形成に欠かせない加工です。PCBやFPCには、電子部品をつなぐ導電パターンとして銅箔が使用されており、信号伝達や電源供給の役割を果たします。
銅箔は、高い導電性を持つ一方で、非常に薄いのが特徴です。そのため、スリット加工を用いて均一な幅に精密にカットする必要があります。
スマートフォンやタブレットのディスプレイに用いられる保護材のカッティングにもスリット加工は用いられます。
保護フィルムを装着するとデバイスの耐久性を向上できるだけでなく、ユーザーの快適な操作にもつながります。しかし、スマートフォンやタブレットのデバイスは多種多様であり、異なる規格に対応させなければなりません。スリット加工によってフィルムを精密にカットすることで、必要なサイズや形状に仕上げられます。
電気自動車(EV)のバッテリー製造において重要な役割を果たす電極フィルムの加工にもスリット加工が用いられます。
電極フィルムはバッテリーの性能や安全性を左右する部材であり、その品質の高さはバッテリーの寿命や効率に直結するため、精密な加工が必要です。スリット加工によってフィルムを均一な幅と厚みに切断することで、バッテリーセルの組み立て工程に適した状態に仕上げられます。
USBやLANケーブルの使用時に外部からのノイズや電磁干渉を防ぎ、データ通信を安定させる絶縁シールドの加工にもスリット加工が導入されています。
近年用いられているケーブルは長尺である一方で細径化が進んでおり、材料を細幅に切断しなければなりません。そのため、ケーブルの太さや用途に合わせてシールド材を正確に切断する工程では、精密なスリット加工が欠かせません。
電子機器業界では、その用途に応じて、銅箔やフィルムなどさまざまな素材が使われます。ここでは、電子機器業界で多用されており、スリット加工できる素材を解説します。
銅箔は、銅を薄く伸ばして作られたシートのことです。電子機器業界ではプリント基板(PCB)、フレキシブル基板(FPC)の加工工程で、主に用いられます。
銅箔は導電性が高いため、電磁波シールドや放熱目的で使用します。機械的な強度はつよいものの、薄く破れやすいため精密なカッティングが必要です。
また、銅箔はフィルムとは異なり油分が含まれず、高価な素材です。スリット加工時は、端面のバリや切り粉が発生しないように、徹底した管理が求められます。
電気自動車に積載するバッテリー用のフィルムにもスリット加工が導入されています。
自動車製造において、センサーやセンシング、パネルなどさまざまな部分に使用されているのが、フィルム素材です。近年は電気自動車の普及に伴い、リチウムイオン電池がバッテリーとして多用されており、その電極やセパレーターには、耐熱性や絶縁性の高いフィルム素材が用いられています。
リチウムイオン電池には軽量化や薄型化が求められる一方で、使用するフィルム素材の品質の良し悪しが、バッテリーの寿命や安全性に直結します。薄いフィルムを適切にカッティングするため、スリット加工には高い精度が必要です。
スマートフォンやタブレット端末に使用される液晶や有機ELディスプレイ材のカッティングにも、スリット加工は活用されています。
ディスプレイ材には、透明性が高く非常に薄いフィルムが用いられるため、加工には細心の注意が必要です。特に、切断面のクリーンさが要求されます。
スマートフォンやタブレット端末の液晶には、カバーガラスが両面テープで固定されています。両面テープにはポリエステルやポリプロピレンなどが多用されており、カッティング時に粘着剤がはみ出さないよう高い技術が必要です。
また、タッチパネルにも光学フィルムが用いられ、本体との固定のために帯電防止フィルムなども活用されています。
スマートフォンやタブレットの画面を保護する目的で用いられる液晶保護フィルムも、スリット加工の対象です。
液晶保護フィルムには映り込み防止や反射防止、ブルーライトカット、指紋の付着防止など機能性が高く多層構造のフィルムが多いため、精密なスリット加工で均一な厚みに仕上げる必要があります。
PETやTACにコーティングを施したフィルムや硬度の高いガラス素材が用いられ、固定用の両面テープにも、ポリエステルやポリプロピレン、アクリルなどが使用されます。カッティングにともなう歪みを防いで端面が整うよう、高度なスリット加工が必要です。
LAN・USBケーブルに用いる絶縁材やノイズ対策のシールド材にもスリット加工は用いられます。
絶縁材やシールド材には、外部からの電磁波ノイズや干渉を防ぎ、データ通信を安定させる役割があります。フィルム素材には薄いPVC(ポリ塩化ビニル)などが用いられるため扱いが難しく、ケーブル自体の細径化が進んでいることもあり、用途や太さに応じた正確な切断加工技術が必要です。
特に、スリット加工においては、巻き取り時のシワやズレを防ぐテンション管理が求められます。
ここからは、電子機器業界でスリット加工が活用される代表的な4つの事例を解説します。
ポリマーフィルムは、電子機器において絶縁や保護の役割を果たす重要な材料です。スマートフォンや液晶ディスプレイ、半導体保護フィルムとして広く利用されています。
このような高精度なスリット加工が求められる素材に、当社の「高速全自動ロールスリッター / KC-316A」が活躍しています。「高速全自動ロールスリッター / KC-316A」は細幅から太幅まで幅広いサイズに対応し、精密な加工を実現します。
従来のロールtoロールスリッターでは課題とされていた、伸び縮みしやすい素材の加工も可能です。加工精度を確保するとともに、在庫の無駄を最小限に抑えることができます。
リチウムイオン電池に使用されるセパレーターは、正極と負極を物理的に分ける重要な役割を果たす部分です。セパレーターの加工にも、弊社の「高速全自動ロールスリッター / KC-316A」が利用されています。
「高速全自動ロールスリッター / KC-316A」は、細幅から太幅までの幅広いサイズに対応できる点が特徴です。さらに、必要な幅だけスリットできるため、従来のロールtoロールスリッターに比べて在庫管理が効率的になります。
通信機器の製造では、LANケーブルやUSBケーブルの絶縁材、ノイズシールドフィルムの加工工程でスリット加工が施されます。
絶縁材やシールドフィルムは、外部からの電磁波干渉やノイズを防ぐのが役割です。絶縁材には、PVC、PE、PPなどが用いられ、ノイズシールドには、アルミ箔や銅箔テープなどが用いられます。薄い材質のため、スリット加工においては、巻き取り時のシワやズレを防ぐテンション管理が重要です。
データセンター機器の製造においても、熱対策やノイズ対策のためのシールド材の加工にスリット加工が導入されています。
熱対策には柔軟性が高く放熱性の高い樹脂製の熱伝導シートが用いられ、外部ノイズ対策には銅箔やアルミ箔などが用いられます。これらの素材を効果的に用いるには、シールド材を適切な形に整えられるスリット加工が必要です。
電子機器業界におけるスリット加工は、製品の品質を大きく左右する重要な工程です。キンダイのロールスリッターは、長年の経験と技術に基づき、電子機器業界特有のニーズに対応した設計となっています。実際に、電子機器業界に数多くの導入実績があります。
従来のロールtoロールのスリッターでは、張力制御や刃の位置調整が非常に難しく、品質の安定が課題でした。キンダイのロールスリッターは、素材を紙管ごと固定して切断する方式を採用しているため、張力の影響を受けにくく、高精度なスリットを実現します。電子機器の製造現場において、歩留まりの向上と生産効率の改善に繋がります。
効率化と高品質を求めるお客様は、ぜひキンダイのロールスリッターをご検討ください。リニューアルしたショールームでは、実際の製品をご覧いただき、テストカットも承っております。お気軽にお越しください。